フレックスタイム制と残業代の関係

1 フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、1か月を上限に、その期間内の総労働時間を定めて、その総労働時間内であれば、労働者が始業時間と終業時間を決められる制度です(労働基準法32条の3)

始業時間と終業時間については、完全に自由なパターンと一定の制限をかけるパターンがあります。

2 フレックスタイム制が有効とされるには

フレックスタイム制が有効とされるためには、労働基準法32条の3などに書かれている条件を満たす必要があります。
具体的には、次の2つの条件を満たすことが必要です。

・就業規則で定めること
・労使協定を締結すること(労働者の過半数が加入する労働組合または労働者の過半数を代表するものとの書面による約束)

労使協定で、具体的にどんなことを決めないといけないかも法律で次の通り決まっています。

・フレックスタイムが適用される労働者の範囲
・精算期間(基準となる期間を1か月以内で決める)
・精算期間における総労働時間(労働基準法の範囲内であること)
・標準となる1日の労働時間(有給休暇の際の基準とするため)
・コアタイム(必ず勤務しなければならない時間帯)を定める場合には、その時間帯
・出勤・退勤時間に制限を設ける場合には、その時間帯(例えば、「午前8時~12時までの間に出勤すること」など)

3 フレックスタイム制における残業代

フレックスタイム制は、1か月以内の期間で総労働時間を定めておき、その期間内の総労働時間が制限の範囲内であれば、1日8時間を超えて労働しても残業代は発生しません。

しかし、その期間内に総労働時間を超えて労働した場合には、原則通り残業代が発生します。

ただし、フレックスタイムにおいては、労働時間の繰り越しができるという特殊性があります。

たとえば、6月の総労働時間は171.4時間、7月の総労働時間は177.1時間と定められていたとします。
この場合に、6月に150時間しか働かなかったとすると、7月の総労働時間を171.4時間と150時間の差である21.4時間を加えた198.5時間とすることができるのです。
その結果、7月は、198.5時間を超えて労働しないと残業代が発生しません。

逆に、6月に180時間働いたような場合は、超過時間分を7月の労働時間を減らして調整することはできず、6月分の給与として残業代を支払わなければなりません。

なお、余った労働時間について、翌月に繰り越すのではなく、給料を減額することで調整することもできます。