入社祝い金、支度金、留学費用などを支払う場合の注意点

いわゆるヘッドハンティングにより従業員を中途採用するケースでは、採用時に会社から入社祝い金・支度金などといわれるお金が支払われることがあります。
また、従業員の海外留学費用を会社が負担するというケースもあります。

何の条件も付けずに純粋にお金が支払われるような場合は、単に贈与あるいは雑所得として処理すればよいのですが、たいていの場合は、「少なくとも当社で3年は働いてもらわないと困る。3年以内に退職する場合は返金してください。」といった条件が付けられたりします。

ですが、このような条件は無効とされます。

なぜなら、労基法第16条が、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めているところ、一旦支払ったお金は、支払った時点で確定的に相手の物になっているのに、それを返せというのは損害賠償と同じだと考えるからです。

では、実質的には同じような効果が発生し、違法とならない方法はないのか、ということで考え出されたのが、債務免除という方法です。

具体的には、入社時や留学時に、会社がお金をあげるのではなく、お金を貸します。
当然、従業員は借りたお金の返済義務を負いますが、一定期間勤務を継続することを条件に返済を免除するという条項を入れておけばよいのです。

この方法だと、従業員に損害賠償というマイナス効果を与えるのではなく、債務免除というプラス効果を与えるので違法ではないという理屈です。

会計上の処理としては、債務免除時点で雑所得があったものとして処理します。

このような方法は、公務員の留学や大手企業で使われている方法ですし、違法とする裁判例を見たことがないので問題はないと考えますが、逆に合法であるという判例があるわけでもないので、最終的には自己責任でお願いいたします。