遅刻した日に残業した場合、残業代(割増賃金)を支払う義務は?

「朝遅刻してしまったから、その分残業しよう」あるいは、上司から、「遅刻したんだから、その分残業しろ」といわれて残業をした場合、残業代を割増賃金で支払わなければならないでしょうか?

この場合、遅刻した日に残業する限りは、割り増し賃金を支払う必要はありません(昭和29年12月21日 基収6143号)。

なぜなら、労働基準法32条2項が1日の労働時間の上限を8時間とし、これを超える場合に割増賃金が発生すると規定しているところ、遅刻した日に遅刻時間分残業する場合は8時間を超えないことになるからです。

具体的に考えてみましょう。
午前9時~午後6時までが所定の労働時間で、昼休みが1時間だとします。
朝1時間遅刻して10時に出勤したため、午後7時まで残業することにしました(昼休みは1時間)。
そうすると、1日の労働時間は8時間で変わらないため、割増賃金は発生せず、通常の8時間分の賃金を支払えばよいということになります。

上記のとおり、割増賃金を支払わなくてよいのは、1日8時間という労働基準法の定める労働時間内だからなので、遅刻した分を別の日に残業して取り戻そうとした場合は、その残業した日の労働時間が8時間を超える場合には、割増賃金を支払う必要があります。