未払い給料・未払い残業代に対する遅延損害金(利息)は?

未払いの給料や残業代などがある場合、本来支払わなければならない日より遅れて支払うことになるので、遅延損害金が発生します。
遅延損害金とは、利息のようなものです。

・在職中の未払い賃金については、年6%(商法514条)

・退職後の未払い賃金については、年14.6%(賃金の支払の確保等に関する法律(略称:賃確法)6条1項)

もっとも、14.6%の利息については例外があり、支払いの遅れが、「天災地変その他やむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによるものである場合」は、適用しないとなっています(賃確法6条2項)。

そして、厚生労働省令である「賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号には、賃確法6条2項にあたる場合として、支払が遅れているのが「合理的な理由で裁判所又は労働委員会で争っていること」と規定されています。

では、どんな場合に14.6%の利息をつけなくて良い「合理的な理由」があるのでしょうか?

この点については、残念ながら裁判例によって様々な解釈があり、統一的な見解はありません。

たとえば、大阪地方裁判所平成22年7月15日判決は、合理的な理由について「天災地変と同視し得るような合理的でかつやむを得ない事由に基づくものと認められた場合に限られる」として、厳しく判断しています。

これに対し、東京高等裁判所平成16年11月24日判決は、合理的な理由の有無について「本件における当事者双方の主張内容、事実関係、法解釈等に照らすならば、第1審被告が、第1審原告らに対する時間外労働の割増手当の支払義務を争うことに合理的な理由がないとはいえない」とし、上記大阪高裁の判断より緩やかに解釈しています。

さらには、1996年に発行された旧労働省労働基準局賃金時間部長の著書「賃金支払確保法の解説」では、会社が専ら賃確法6条の遅延利息の支払を免れる意思がある場合以外は、合理的な理由がある旨解説しています。

最後に挙げた、非常に緩やかな解釈をする見解に基づく裁判例を見つけることはできなかったので、裁判や労働審判の際に基準となることはないでしょう。
すなわち、会社側は、少なくとも、会社が賃金を支払わなくて良いと考えても仕方がないといえるような、法律上又は事実上の争点があったことを主張する必要があるといえます。