有期雇用契約の労働者を期間の途中で解雇できるか?

有期雇用契約は、会社が労働者との間で期間を定めて労働契約を締結することをですが、このような、もともと雇用期間が決められているような契約で、労働者を期間の途中で解雇することができるでしょうか?

この点、法律は、正社員の解雇とは異なる規定を置いています。

民法628条
やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

労働契約法17条1項
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

ほとんど同じ規定ですが、労働契約法で使用者(会社)側からの解雇について改めて規定されたのは、この規定が強行法規でであること(労働契約や就業規則で変更できないこと)と、解雇する「やむを得ない事由」は、使用者(会社)が証明しなければならないことを明らかにしてものと解釈されています。

そして、「やむを得ない事由」の解釈にあたっては、労働者の「その期間は雇用されるんだ」という期待を保護する必要性と条文の文言から、期間の定めのない労働契約の際の解雇より厳しく判断されます。

では、具体的にはどの程度厳しく判断されるかですが、一般化できる基準はなく、個別具体的に判断するしかありません。

参考に、労働法の大家である菅野和夫先生は、「当該契約期間は雇用するという約束があるにもかかわらず、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるをえないような特別の重大な事由をいう」とされています。

この点について判断したもので公開されている裁判例は多くありません。
数少ない裁判例である【福岡高等裁判所平成14年9月18日決定(安川電機八幡工場事件)】は、判決ではなく、従業員としての地位を保全することを目的とする仮処分についてですが、「労働契約締結からわずか5日後に,3ヶ月間の契約期間の終了を待つことなく解雇しなければならないほどの予想外かつやむをえない事態が発生したと認めるに足りる疎明資料はない」とし、解雇の正当性について厳格に判断しています。