使用者(会社)の労働時間把握義務とは

1 労働時間把握義務とは?

給与や残業代は、働いた時間に応じて支払われます。
では、この働いた時間(労働時間)は、従業員が管理しないといけないのでしょうか?
それとも雇っている側(使用者)が管理しないといけないのでしょうか?

この点については、労働基準法108条、労働基準法施行規則54条1項5号、6号において、使用者が、各労働者ごとの労働時間、時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間を賃金台帳に記入する義務を負うとされています。

要するに、雇う側が労働時間を管理しろということです。

この規定に違反した場合には、労働基準法120条1号により、30万円以下の罰金に処せられます。

さらに、サービス残業の抑制などの目的で、次のような内容の通達がなされています。

平成13年4月6日基発339号 労働時間把握基準
・使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し記録すること
・確認記録方法は、使用者自らの現認またはタイムカード等の客観的な記録の利用を原則とすること
・自己申告制により行わざるを得ない場合には、労働者に十分な説明を行い、申告時間の正確性につき必要に応じて実態調査を行い、勝つ、適正な申告を阻害する目的で労働時間の上限を設定するなどの措置を行ってはならない。

・労働時間の記録は、労働基準法109条に基づき3年間保存すること

2 残業代請求において労働時間が不明な場合の対応は?

上記が法律上の義務ではあるのですが、現実には、会社などの使用者に労働時間についての資料を出すように要求すると、かなりいい加減な資料が返ってくることがあります。
ひどい場合には、「労働時間に関する記録はない」という返事があったこともあります。

労働時間に関する記録を隠している場合には、保全処分や、訴訟提起後に文書送付嘱託などを利用して開示させるということも可能ですが、本当に何の記録もとっていない場合もあります。

そのような場合は、手持ちの証拠で可能な範囲で請求せざるを得ません。

上記1の労働時間把握義務からすれば、会社側が、労働者が働いていないことを証明すればよさそうなものですが、現在の法律の解釈としては、労働者側が、その時間に働いていたことを証明する必要があると考えられています。

よって、会社に対し未払い残業代等を請求しようとする場合、従業員側で記録を残したり、会社にこんな記録があるということを記録しておく必要があります。