2018年の民法改正で、相続人でなくても、亡くなった方(被相続人)の介護をするなど、特別な寄与をした親族がいる場合に、相続人に対して、一定金額を請求できるという制度が、新しい民法1050条として作られました(2019年7月1日施行)。

以下では、この特別な寄与という制度について、詳しく説明します。

1 どんな場合に請求できるか?

特別な寄与として認められて、相続人に寄与分を請求できるための要件は、以下の3つです。

① 亡くなった方に対して無償で療養看護などの行為を行ったこと
② 亡くなった方の財産が維持、または、増加したこと
③ 亡くなった方の親族であること

各要件について、もう少し詳しく説明します。

① 亡くなった方に対して無償で療養看護などの行為を行ったこと

まず、亡くなった方に対して無償で療養監護をするなど、特別な寄与をしたことが必要です。

特別な寄与にあたるかどうかは、個別に判断せざるを得ませんが、親族としての常識的な範囲の行為は特別な寄与と認められません。
たとえば、お見舞いに数回行ったという程度は、特別な寄与には当たりません。

また、寄与の方法について、無償で療養監護するというのは例示であって、他の方法での貢献も含まれます。
たとえば、嫁として家業を無償で手伝っていた場合なども含まれます。

② 亡くなった方の財産の維持、または、増加したこと

次に、特別な寄与によって、亡くなった財産が維持されたこと、または、増加したことが必要になります。

なぜなら、遺産分割というのは、亡くなった方の財産を分けようとするものですから、財産的な貢献に限られるのです。

では、無償での介護が、なぜ財産的貢献があるといえるのかというと、本来であれば有料の介護費用が節約できたと考えるからです。
そういう意味では、プロに頼んでいてもおかしくない要介護度の方を介護したということで、①の特別の寄与にあたるかの判断とも関連します。

そして、この節約できた費用、または、増加した費用を、寄与分として請求することになります。

なお、相続財産がマイナスの場合には、寄与者に支払うべきお金はないという扱いになります。

③ 亡くなった方の親族であること

最後に、亡くなった方の親族である必要があります。

親族とはだれかについては、民法725条に以下のように規定されています。

・六親等内の血族
・配偶者
・三親等内の姻族

血族とは、文字通り血のつながりがある者です。
ただし、養子は、法律上は実子と同じ扱いになるので、血のつながりがなくても血族です。

姻族とは、配偶者(夫・妻)の血族です。

そして、親等については、親子を1とし、配偶者は0として数えます。
例えば、親子だと1親等、祖父母だと2親等、兄弟だと一旦親にさかのぼって再度下りてくるので1+1=2親等となります。

なお、厳密には、この特別な寄与をした者について、「相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く」と規定されていますが、相続人が特別な寄与をした場合には、通常の寄与分が認められるため、この特別寄与分を認める必要がないため、当然のことを規定しただけです。

2 誰に対して請求できるか?

では、特別な寄与をした親族がいる場合、その寄与分を誰に対して請求すればよいのでしょうか?

この点については、法律は、「相続人に対し」としか規定していないため、各相続人に対し、その相続割合に応じて請求することになります。

たとえば、相続財産が1000万円あり、相続人は子供2人、そのうち1人の子の配偶者が介護をしており、それを金銭に換算すると300万円相当だとします。
その場合、その配偶者は、子供たち各人に150万円ずつ請求できることになります。

なお、一部の相続人のみを相手に請求を行った場合には、その相続人との関係でのみ寄与分が決まります。

3 請求のための具体的な手続きは?

請求方法について制限はないので、事実上請求をして、話し合いで決まれば、それが有効となります。

話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申立て、それでも決まらない場合は、審判という手続きで裁判所が決めることになります。

なお、調停や審判の申立ては、特別寄与分の請求のみでも可能ですし、遺産分割と同時に申し立てたり、通常の寄与分と同時に申し立てることも可能です。

4 いつまでに請求しなければならないのか?

特別な寄与もいつまでも請求できるとしては、請求される側が不安でたまりません。
そのため法律は、以下のいずれか早い方が来た時点で請求はできなくなるとしています

① 相続の開始(亡くなったとき)と相続人を知った時から、6か月以内
② 相続開始の時から1年を経過していないこと

 

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