合資会社の負債と遺留分の計算に関する最高裁判決

被相続人(亡くなった方)が合資会社の無限責任社員であった場合、遺留分の計算において、合資会社の負債をどのように取り扱うかが争われた事案について、最高裁判所が判断しました。

前提として、合資会社について簡単に説明します。

合資会社は、有限責任社員と無限責任社員からなる会社です。
社員とは、従業員ではなく、出資者のことです。
有限責任社員とは、株主のようなもので、会社の経営が悪化した場合、出資金が返って来なくなるだけの関係です。
無限責任社員とは、自営業のようなもので、会社の負債について個人でも責任を負います。

合資会社の無限責任社員は、このような重い責任を負う関係上、死亡すると当然に退社したものとして扱われます。

今回の判例は、被相続人が死亡時=退社時には会社が赤字だけれども、会社は存続しているという場合、遺留分との関係で、会社の赤字をどのように扱うかが問題となりました。

この点について、最高裁判所は、令和元年12月24日判決で次のように判示しました。

「無限責任社員が合資会社を退社した場合には、退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされ(会社法611条2項)、その結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を下回るときには、当該社員は、その持分の払い戻しを受けることができる(同条1項)。一方、上記計算がされた結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超えるときには、定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り、当該社員は、当該会社に対してその超過額を支払わなければならないと解するのが相当である。このように解することが、合資会社の設立及び存続のために無限責任社員の存在が必要とされていること(同胞576条3項、638条2項2号、639条2項)、各社員の出資の価額に応じた割合等により損益を各社員に分配するものとされていること(同法622条)などの合資会社の制度の仕組みに沿い、合資会社の社員間の公平にもかなうというべきである。」

つまり、遺留分計算の際に計算の基礎となる財産は次のとおりですが、

遺留分計算の基礎になる財産=亡くなったときに持っていた財産+贈与した財産-債務(借金)

この計算式の「債務」の部分に、合資会社の赤字分も含めよ、ということです。

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