20年以上の夫婦における不動産贈与の持ち戻し免除の意思の推定という制度が、2018年7月6日の民法改正により設けられました(2019年7月1日施行)。
1 持ち戻しと持ち戻し免除
持ち戻しとは、相続人間の公平をはかるために、贈与された財産についても、計算上相続財産に戻して計算しようというものです。
持ち戻し免除とは、相続人が、贈与した財産については相続財産に持ち戻して計算しなくてよいという意思表示をしていた場合に、持ち戻しをしなくてよいという制度です。
くわしくは、こちらの特別受益の説明をご覧ください。
2 持ち戻し免除の推定が認められる要件
持ち戻しの免除を推定する規定は、民法903条4項として設けられました。
具体的には、以下の二つの要件両方を充足する場合に認められます。
①婚姻期間が20年以上の夫婦
②居住用不動産の贈与又は遺贈
あくまで推定規定なので、被相続人が、持ち戻し免除を認めない内容の遺言等を書いていた場合には、推定は破られ、原則通り持ち戻さないといけません。
3 具体例
夫A、妻Bは、20年以上の夫婦で、CとDという子供がいます。
Aが亡くなった際の、相続財産は、預金5000万円です。
それとは別に、2000万円相当の家がBに遺贈されました。
このケースで、持ち戻しがなされる場合、相続財産は、計算上7000万円となり、法定相続分どおりに分けると、B3500万円、C1750万円、D1750万円となります。
なお、Bは、既に2000万円相当の家を取得しているので、預金から1500万円を受取ることになります。
持ち戻しが推定されると、2000万円は、相続財産の対象外となるので、預金5000円を分けることになり、法定相続分どおりに分けると、B2500万円、C1250万円、D1250万円を預金から取得することになります。