相続について解決するまで、残された夫(妻)に、とりあえず自宅に住むことを認める配偶者短期居住権という制度が、2018年7月6日の民法改正により設けられました(施行日は2020年4月1日)。
今回は、この配偶者短期居住権について説明します。

なお、配偶者居住権(短期居住権との対比で長期居住権といわれたりもします)という制度もできたので、こちらのコラムもご覧ください。

1 配偶者短期居住権とは

配偶者短期居住権とは、一緒に住んでいた配偶者がすぐに出ていかないといけないというのは酷なので、一定期間に限り居住権を認めようという制度です。

具体的には、以下の二つの期間、配偶者短期居住権が認められます。

⑴ 建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合、遺産分割によって居住建物が誰のものになるか決まった日、または、相続開始の時(亡くなった時)から6か月を経過した日、のいずれか遅い日までの期間

⑵ 配偶者が建物についての遺産分割に関与しないとき(その建物が他の相続人に遺贈される場合など)は、建物の所有者から、配偶者に対して短期配偶者居住権消滅の申入れがなされてから6か月を経過した日

ただし、配偶者が、長期の配偶者居住権を取得した場合には、短期居住権を認める必要はないため、短期居住権はなくなります。

また、配偶者が、相続欠格や推定相続人排除により相続人ではなくなった場合にも、配偶者短期居住権は認められません。

2 配偶者短期居住権者の権利と義務

⑴ 用法遵守義務、善管注意義務

配偶者は、これまでと同じように建物を使用しなければならず、かつ、善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負います。

善管注意義務というと難しく聞こえますが、要するに、責任を持って丁寧に扱ってねという程度で考えておけば良いでしょう。

なお、用法遵守義務違反・善管注意義務違反がある場合や、所有者の同意(各相続人または不動産取得者)を得ずに第三者を住まわせた場合は、建物所有者は、配偶者に対する意思表示により、配偶者短期居住権を消滅させることができます。

⑵ 建物の修繕

配偶者居住権は、その建物に住むために必要な範囲で、所有者の承諾がなくても修繕をすることができます。

配偶者が修繕をしないときには、所有者が修繕をすることも認められています。

建物が修繕を要するのに配偶者が修繕をしない場合は、配偶者は、修繕を要する状態であること、配偶者自身で修繕をしないことを所有者に伝える義務があります。

⑶ 費用の負担

配偶者は、通常必要とされる費用については、自己負担となります。

通常の必要費以外の費用を支出した場合には、所有者(は、費用を支払う義務を負います。

ただし、有益費(建物の価値を増加させる費用)については、裁判所が支払について一定程度猶予期間を定めることができます。

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