1 遺産の一部分割

2018年改正の民法で、遺産の一部だけを先に分割できる制度ができました。
ズバリそのままの条文なので引用します(2019年7月1日施行)。

民法907条
1 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその分割については、この限りでない。
3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁じることができる。

なお、2項に定めがある通り、相続人同士で話し合いができないときは、裁判所に審判を求めることができます。
この場合、裁判所は、当事者の主張に関係なく判断をすることができます。

2 例外的に一部分割が認められない場合

上記2項のとおり、「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」には、遺産の一部分割は認められません。

では、「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」とはどんな場合かですが、特別受益について検討し、代償金、換価等の分割方法も検討した上で、最終的に適正な分割を達成しうる見通しが立てられた場合をいいます。

3 具体例

具体的に考えてみましょう。

たとえば、被相続人Aの相続財産は、普通預金300万円、定期預金500万、不動産500万円相当でした。
Aには、妻Bと子Cがいましたが、なかなか遺産分割について合意がまとまりません。
そうしているうちに、Bは、持病が悪化し、手術することになったため、入院手術費用、その後のリハビリ費用などが必要になったため、とりあえず普通預金だけでも分割したいと思い、裁判所に申立をしました。

この場合、仮に普通預金300万円を先に分割するとすると、残りは定期預金500万円と不動産500万円になります。

そうすると、仮にB名義の資産がなく、Aと住んでいた自宅に住み続けたいと主張した場合、Bが不動産全部を取得するには代償金を支払う必要が出てきますが、残る定期預金500万円をCのものとすれば問題は生じません。

よって、Bが主張する普通預金を先に分割することを許容したとしても、Cが害されるおそれはないといえることから、遺産の一部分割が認められるということになります。

 

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