カーナビに従ったルートを走ったら車が傷ついたから損害賠償?

カーナビのルート案内に従って走っていたら、どんどん狭い道になり、草木がせり出していたから車に傷がついた、「カーナビ会社と地図会社が責任をとれ!」という裁判がありました(福島地方裁判所平成30年12月4日判決)。

結論としては、請求は認められませんでした。

感覚的に、「ムリでしょ」と思いますが、判決では理由も書かないといけません。
裁判所が、どのような理由で、請求を棄却(認めないという判決)したのか、ご紹介します。

カーナビは、地図情報に基づいてルート案内サービスを提供する機器であるが、「全国各地の道路の正確な状況をリアルタイムで情報提供するのは不可能か位置印く困難であり、ましてや、個々の道路の安全性については、現に直面する運転者が最も把握し得るところであり、カーナビにおいて表示する道路の安全性まで保障できるものではない。
この点、本件カーナビの画面表示や取扱説明書において、地図データ等が実際の道路状況や交通規制と異なる可能性がある旨指摘し、カーナビの表示に盲目的に従うことがないように指摘している。
・・・(中略)
ルート案内された道路を走行するか否かは、車両の運転者が実際の道路状況や車両の車種・形態等の事情を踏まえて自ら判断すべきものであり、カーナビの表示したルート案内は運転者の判断材料の一つに過ぎないと考えるのが相当である。
・・・(中略)
以上のとおり、本件カーナビが本件道路を含むルートを表示すること自体が必ずしも不合理でない上、原告が本件カーナビのルート案内に依存せず、自らの判断に基づき本件道路を走行しなければならないところ、あえて本件道路の走行を選択したものであり、仮にその際に本件車両に擦過痕が生じたとしても、それは本件カーナビのルート案内によって生じたものと認めることはできない。
したがって、本件カーナビによるルート案内と本件車両に生じた擦過痕との間に相当因果関係は認められない。」

以上のとおり、損害賠償をするには、原則として、故意または過失による行為によって損害が生じていることが必要ですが、裁判所は、カーナビの地図表示に故意・過失はないし、その道路を走行するかどうかは運転者が決めるものなので、キズの原因は、あなたが自己判断でそのルートを走行したからでしょ、という判断をしました。

今回はカーナビのルート案内に従った場合に関する裁判例ですが、今後は自動運転あるいは、アシスト機能に関して裁判が出てくるかもしれません。
もはや法解釈では限界ではないかと思うので、機械の進歩に応じた法改正が必要でしょう。

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