寄与分と遺贈の関係で説明した通り、寄与分と遺贈とでは、遺贈が優先します。
しかし、寄与分と遺留分の関係では、寄与分が優先します。
そして、遺留分を侵害された場合には、遺留分侵害の限度で遺贈されたものを返せということができます(民法1031条)。
そうだとすると、誰かが遺留分減殺請求をすることで、相続財産として戻ってきた遺贈を対象として寄与分を主張することができるでしょうか?
この点については、遺贈を返せといえるのは、遺留分を保全するために必要な限度で認められるのであって、たまたま帰ってきた遺贈分について寄与分を主張することはできないと解釈されています。
ちょっと分かりにくいですね。
具体例で考えてみましょう。
亡くなった方(A)には、相続財産2000万円がありましたが、遺言があり、相続財産全てをBに遺贈するとされていました。
Aには、CとDという子供がいました。
このうち、Cは、Aが要介護になってから、Aの介護をするようになり、そのおかげで介護費用500万円が節約できました。
この場合、通常であれば、Cは、寄与分として相続財産から500万円もらえたのですが、寄与分より遺贈が優先するため、寄与分はもらえないということになります。
ところが、CとDは、子供としての遺留分があるため、遺贈を受けたBに対して、
〈相続財産の2分の1×法定相続割〉を遺留分として請求できます。
つまり、CとDは、各250万円(合計500万円)をBから返してもらえます。
ここで、戻ってきた500万円について、Cが、「遺留分より寄与分が優先するから、全部オレのものだよね」といえるかという問題です。
これについて、あくまでも遺贈は遺留分との関係で戻しただけであるから、Cの主張は認められないということになります。