寄与分と遺贈、相続分の指定の関係は?

相続財産維持または増加に特別な貢献がある場合には寄与分が認められますが、では、寄与分と遺贈が抵触する場合はどちらが優先するでしょうか?
また、相続分の指定がある場合、寄与分を先に考えてから相続分を考えるのか、相続分を考えてから寄与分を考えるのか、どちらが先でしょうか?

1 寄与分と遺贈の優先関係は?

被相続人(亡くなった方)が、遺言で相続財産を誰かに贈与する(遺贈)と書いていたため、残っている財産が、寄与分を考えると少なすぎる場合、寄与分権利者は、遺贈を受けた者(受遺者)に対して、寄与分相当額を返還するように主張できるでしょうか?

この点については、法律上明確に規定があり、遺贈分を返せということはできません(民法904条の2第3項)。

民法904条の2第3項
寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

つまり、

遺贈の結果の残余財産<寄与分

となった場合は、寄与分は残余財産を上限とするということです。

2 寄与分と相続分の指定の優先関係は?

相続分の指定とは、具体的な相続財産を誰かに譲るというものではなく、相続人の中の一定の者について、相続割合を決めておく場合をいいます。

この相続分の指定があった場合、遺言にある相続割合は寄与分考慮の対象外とするのでしょうか?それとも、寄与分を考慮後に相続割合を考えるのでしょうか?

この点についても、法律に明確な規定があり、相続財産から寄与分を差し引いた後の財産(みなし相続財産)を、遺言による指定割合で分けることになります(民法904条の2第1項)。

民法904条の2第1項
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

3 遺言で寄与分を決めるのはあり?

遺言で決められる事項には制限があり、寄与分は遺言の対象外とされています。
実質的にも、亡くなった方の財産形成に、寄与者がどの程度貢献したかを遺言で決めるのはおかしいですよね。

ですから、遺言で寄与分を認めないとか、寄与分は○○円とすると決めても無効です。

ただし、寄与者の寄与の程度を推測する一事情になることはあります。

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