寄与分=相続財産への貢献による修正

1 寄与分とは

相続人の中に、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に貢献した人がいる場合に、その分を考慮して相続財産を決めようとするのが寄与分の制度です。

寄与分が認められる場合には、相続財産から、寄与分を差し引いたものを相続財産とみなして、そのみなし相続財産を相続割合に応じて分けます。
差し引いた寄与分相当額については、上記の手順で分けた後の寄与者の相続分に加算します。

2 寄与分の要件

⑴ 寄与者が相続人であること

寄与分が認められるのは、相続人に限られます。
相続人以外の者の貢献は、寄与分としては認められません。

なお、被相続人の子が先に亡くなっており、孫がいる場合には、代襲相続が発生しますが、代襲相続人は、被代襲者(もともとの相続人)の寄与分を主張することが可能です。

ここで問題になるのが、いわゆる嫁の貢献です。
従来、この問題については法律上の規定はないものの、妻は相続人である夫の補助者であるから、夫の寄与として考慮しようという判決がみられました。

弁護士や学者は、妻の貢献を考慮しようという考え方には好意的でしたが、法解釈としては無理な解釈に批判もあり、2018年7月6日に民法の一部が改正され(施行日未定)、「特別の寄与」という新しい条文が設けられました(民法1050条)。
この点については、特別の寄与のページをご覧ください。

⑵ 特別な寄与があったこと

寄与行為については、特に制限はなく、およそあらゆる行為が寄与行為となりえますが、代表的なものとして、①被相続人への労務の提供や財産上の給付、②被相続人の療養監護、といったものがあります。

また、「特別な」寄与が必要なので、扶養義務の範囲内といえる程度のものは寄与分として考慮されません。

①の類型でも代表的なものは、無償、あるいは小遣い程度の金額での家業の手伝いです。
相続人の家業の手伝いにより、本来支払われる給与を節約でき、そのおかげで家業を維持・拡大できたといえれば、特別な寄与があったとして寄与分が認められます。

②の類型で代表的なものは、1人の相続人のみが要介護の被相続人を何年にもわたり介護していたようなケースです。
この場合も、その相続人の介護により、ヘルパー費用や介護施設費用が節約できたと考え、特別な寄与があったものとして寄与分が認められることがあります。

⑶ 寄与行為によって財産が維持または増加したこと

寄与分が認められるには、特別な寄与によって、被相続人の財産が維持または増加したことが必要です。
金銭的な寄与以外は考慮されません。
なぜなら、遺産分割が、被相続人の残した財産を分ける制度だからです。

そうはいっても、上記⑵で記載のように、介護をすれば、介護費用を節約できたと認定されたりするので、意外と適用判批は広いものです。
何か「こんなに頑張ったのに」と思うことがあれば、それが寄与分にならないか弁護士に質問してください。

3 寄与分額の算定方法

⑴ 寄与分評価の時期

寄与分を金銭評価するにあたり、いつの時期の金額を基準とするかが問題になりますが、この点については、相続開始時(被相続人が亡くなったとき)とすることで争いがありません。

⑵ 寄与分評価の方法

寄与分を金銭に換算する具体的方法については、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他の一切の事情を考慮して決められます。

何とも曖昧な判断基準ですが、寄与分が特定の相続人による貢献があった場合に、他の相続人との公平をはかる制度という点と、寄与の方法はさまざまである点を考慮すれば、ケースバイケースで評価せざるを得ないでしょう。

具体例については、多くの裁判例があるので、順次本サイトのコラムで紹介したいと考えています。

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